第01話~家族について~その①
私 ミサエのこと…
静岡県に生まれ、大学を卒業した後、当時としては先駆け的存在だった高級会員制スポーツクラブを持つ製糖会社に就職。
約4年間インストラクターやら営業の経験を積む。
夫と知り合い26歳で結婚。同時に会社を退職。
その後、20年間、パートの一つをすることもなく主婦業と子育てに専念。
末っ子が2年生になるころぼちぼち社会復帰(大してお金にならないバイト)を始める。
人生の模様替えと称し、渡航を決意。
現在娘のフミコとともにAucklannd在住。
夫 ヒロシのこと…
2013年春、夫は5年間に及ぶ関西方面での単身赴任で心身のバランスを崩し、数ヶ月間休職して鎌倉の自宅に戻っていた。
4人の子供を抱える一家を支えるためとはいえ、大企業といわれる組織の中で清濁併せて多くの経験をしすぎていた。悲しすぎるほどに完璧な日本のサラリーマン。。。本来自分の強みを生かして就いたわけではない業務にも、持ち前の努力と勤勉で日々の目標を達成してきた。
犠牲にしてきたものも計り知れない。それは家族としての幸せという意味においても…。
そして、確実に玉虫色に日々は過ぎ、年を重ね、年功序列で僅かづつではあっても確実にサラリーだけは増えていく……。その階段を登り続けた忠実な社員が、途中でその階段を下りるには相当な勇気と動機が必要だ。辞めてどうする?家族はどうなる?
彼自身、家長としての持ち前の責任感で、常にそう自問自答していたのかもしれない。それでも夫に具体的な夢があったなら、家族としても何かしらのチャレンジは出来たのかもしれない。
しかし一方で、立場変われば、彼はあまりにも親孝行な長男でもあった。親の期待を一身に背負った、いや自ら背負うことを喜びとする息子であった。70歳を過ぎた両親を置いて日本を離れるという選択肢は彼の中ではありえない選択だった。
そして彼は日本に残った。