移住コラム第14回:専門学校生活

ニュージーランドに入国してから1ヶ月半、棲家も決まり家具も生活用品も揃い、1月の中旬からいよいよ専門学校(polytechnic)の履修が始まりました。僕が入学したのはMicrosoftのSQL Server、C#というコンピューター言語、ASP.netというWeb開発環境を3ターム/9ヶ月で学ぶ、いわゆるプログラマー向けのコースです。大卒で入社してから20年近く間を開けることなく会社勤めしてきたので「久々に学生に戻れる」というワクワク感はありましたが、プログラミングは新入社員の頃に少しやらされただけで、全く向いてないと気付いて早々にビジネスプロセス設計・プロジェクトマネージメントの分野に進んだクチなので、正直少し憂鬱でもありました。でも、同じIT業界でこれからキャリアを積んでいこうとする高卒の若い子達に囲まれて、自分の経験から色々アドバイスできることもあるかも?と考えると、やっぱり楽しみの方が先行していたと思います。

あともう一つ、留学経験がないため完全に英語だけで授業を受けるのは実は生まれて初めての経験でした。仕事で日常的に英語を使っていたとは言え、英語圏ネイティブよりもアジア人(大半はインド人)が多い職場だったので、これまで英語における「ブレイクスルー(ある日を境に突然英語が聞き取れ出す)」を経験したことはありませんでした。9ヶ月も英語一色の学習環境に置かれることで、苦労はするにしてもその後にこの歳になってもブレイクスルーが訪れるのでは?という期待があったんです。就学の目的は唯一オープンワークパーミットを卒業後に得ることのみで、プログラミングを学校で学んで未経験のソフトウェアディベロッパーとして再出発する気はサラサラなかったのですが、英語をコアにしてキャリアを構築してきた自分にとって英語圏に留学しているという意義はとても大きく、英語力に更なる自信が付けばその後のNZでの就職でも有利に働くに違いない、と確信めいたものがありました。

そんなこんなで初日。

最初のタームの先生(tutorと言います)は中国からの移民でした。高校くらいにNZへ渡ってきた人なのでかなりKiwiな発音になっていましたが、やっぱりまだ中国人特有の英語のクセがあります。でも、ITの世界は他の業界に比べても多国籍な人材が活躍しているものなので「まー仕方ないかな」という感じでした。ちなみにこの先生には最後のタームも教えてもらうことになります。2ターム目の先生もなんと中国人で、こちらは生徒から苦情が出るくらい酷い中国訛りの英語を話す人でした。。。

クラスメートは初日の自己紹介の際に「結構自分と同じインターナショナルの生徒が多いな」と感じましたが、Kiwiの、しかもかなり社会人経験を積んでキャリアチェンジのためにこの専門学校に入学してきたような人達が何名かいました。「こういう人達と仲良くなればずっとKiwi英語に晒されていられるかも!」という淡い期待を抱いていましたが、その期待は1週間後に消え去ります

なんとKiwiの生徒は内容が難しかったからなのかどうか定かではありませんが、1週間で大半が脱落してクラスに顔を出さなくなりました。。。残ったKiwiの生徒は高校卒業したての2人だけで、結局卒業までには彼らも脱落してしまい、クラスメートはほぼ全員がインターナショナルの生徒になってしまったのです。国籍はフィリピン、ブラジル、ベトナム、日本、中国といった顔ぶれで、日本で勤めていた職場の雰囲気とあまり変わらない状況でした。みんなしっかりした英語は話しますし、会話は当然英語なので自分が言いたいことを英語で伝える訓練にはなりますが、クラスでKiwi英語にどっぷり浸かるという機会は完全に失われてしまったのです。。。

でもこの環境、実は悪いことばかりではありませんでした。

インターナショナルのクラスメートはほとんどが僕と同じでニュージーランドへの移民を目的に来てる人達で、本国や他国で既にプログラマーとして十分な経験をしてきたという人がほとんどだったんです。僕はIT業界でのキャリアは長いといってもプログラミングは素人同然。オブジェクト志向開発の概念さえも十分に理解しないまま来ていたので、授業の課題をこなすのも四苦八苦していました。そんな時に僕の低レベルな質問に真摯に答えてくれる経験豊富なクラスメート達の存在は本当に貴重でした。彼らの協力なしに卒業はあり得なかったと思います。

また、ニュージーランドへの移民を目指す(しかも多くは同じ家族持ち)という目標を同じくしていたので、ビザ情報だったり、求人情報だったり、家族の問題だったり、あらゆることを話し合って共有することができました。今でもちょくちょく一緒に飲みに行ったりお互いの家に遊びに行ったり、生涯に渡って続くであろう友情を育む機会に恵まれたことは英語の上達以上に貴重だったと思います。

なんだかんだ言って楽しい学生生活でしたが、これから同じ「専門学校⇒オープンワークビザ」という道を模索する方に役に立つかもしれない情報を最後に一つ。

学生ビザを保持している人は週20時間までのアルバイトが認められています。僕の場合は就職先に直結するようなコンサルタントやプロジェクトマネージャーといった職種でのアルバイト先は皆無に等しかったのと、家族のサポートも常時必要だったので結局在学中にアルバイトすることはありませんでしたが、プログラマーであればオークランドだと比較的パートタイムの仕事はあるようです。クラスメートでも学校の前や後にアルバイトしている人は何人かいました。

この時必ず必要になってくるのがIRD number(納税者番号)です。郵便局(New Zealand Post)に窓口がありそこで申請するのですが、アルバイト先が決まってなくても身分証明書と住所が証明できる郵便物などがあればいつでも申請することは可能です。番号が届くまで2週間くらいかかりますので、時間を見つけて早めに取得しておきましょう。アルバイトでなくても就職する時にはどうせ求められるものなので。

 

(続く)