英語コラム第3回:二重否定(Double Negative)

このカテゴリー最初のトピックは二重否定(Double Negative)についてです。
二重否定といっても実は色々種類があります。大きく分けて3つかと思います。


1) 強調
Rolling Stonesの「I can't get no satisfaction」という有名な歌がありますが、そのタイトルが正にそれ。本来であれば「I can’t get any satisfaction」か「I can get no satisfaction」のどちらかなんですが、それを重ねることで強調の意味を持たせる効果があります。

この用法は文法的にはバツなので、あまり多用してると教養がないと思われてしまう可能性もあり注意が必要です。ただ、口語としては既に地位を確立しているので、使うシチュエーションによってはCoolに聞こえるのもまた事実。

以前何かの洋画で黒人のバンドが1曲演奏した後のブレークで

We'll be back in a while, so don't nobody go nowhere.

と言ってたシーンがありました。
これなんか二重否定を超えて三重否定ですが、結局意味的には普通の否定と同じで「ブレークの後も続けて聞いてね」という意図をおもいっきり強調してるだけですね。


2) 婉曲
否定の否定は肯定、という紛らわしい言い方です。

It's not that I don't get what you mean.
=君が言わんとすることがわからない、というわけではない。

「I get what you mean.」と同じ意味ですが、なんとなく回りくどい、直接的な表現を避けるような用法です。上記の訳のように、日本語でもニュアンスは同じですね。

これはあまり多用していると、なんかくどい人という印象を与えてしまいます。もしどちらかの否定語を別の言葉に置き換えられる(例えばcannotをbe impossibleとか)のであればよりわかりやすくなる場合もあります。


3) 否定を含む動詞
上記1)と2)の複合系みたいな形です。文法的にはNG、意味的には肯定、となる用法です。

I can't not accept it.
=それを受け入れないわけにはいかない。

文法的に正しい文にするとすれば「I can't help but accept it.」が近いかと思います。「but」はご存じのようにそれ自体で否定を含むことができるので、「but」が「not」に置き換わったと考えて差し支えありません。「not accept」を「受け入れない(≒reject)」という一つの動詞のように扱ってると考えることもできます。

基本的に口語体だと思いますが結構良く耳にするので、自分から使うかどうかは別として覚えておいて損はないでしょう。

あと最後に脱線しますが、UKコメディーの「IT Crowd」というドラマでこんなシーンがありました。
Royという男がPink FloydのAnother Brick In The Wall Part 2という曲を口ずさんでいて、その内容にMossという同僚が突っ込みを入れます。

Roy:♪We don't need no education♪(♪教育なんかいらないー♪)
Moss:Yes you do! You just used double negative.(そんなことないよ!たった今二重否定使ったじゃん。)

日本語訳だと何が面白いのか全くわからなくなるジョークの典型ですが、ここでの二重否定は1)の用法ですね。(笑