英語コラム第35回:White Christmas (1942)

海外はどこも同じようなものですが、だいたい10月くらいから街ではクリスマスグッズが売りに出され始め、会社なんかでもクリスマスパーティーの場所を押さえにかかり始め、みんなソワソワして仕事が手に付かなくなります。

少し季節が異なりますが、超スタンダードナンバーのこの曲を今日のテーマにします。

White Christmas by Bing Crosby 

元はIrving Berlinというsongwriterが作詞・作曲したもので、色々な歌手によって今日まで歌われていますがこのBing Crosbyによるシングルが最大のヒットであり、実はこのBing Crosbyバージョンが史上最もヒットしたシングル(推定5000万枚)として記録されています。

曲は3番までありますが、2番と3番の歌詞は同じです。
短いので1番、2番を全文掲載します。

I'm dreaming of a white Christmas 
Just like the ones I used to know
Where the treetops glisten 
And children listen
To hear sleigh bells in the snow

I'm dreaming of a white Christmas 
With every Christmas card I write 
May your days be merry and bright 
And may all your Christmases be white

まず、英語の文法やルールと関係ありませんが、個人的に一番好きな個所が1番の「glisten」と「listen」が韻(rhyme)を踏むところです。「listen」のように原型が「-en」で終わる動詞はあまりないので、聴いていてすごく新鮮な響きを与えてくれます。

そして、こことかぶるんですが「listen to hear」のところ。

listen=意識的に注意してよく聞く
hear=聞こうとしてなくても自然と聞こえてくる

と違いを習いますよね?だったら、この子供達がやってるのはどっち?と思いませんでしたか?

実は、「listen to hear」は上記の説明を合わせたような意味で『ベルの音が聞こえてくるhearように耳を澄ますlisten』という意味なんです。慣用句みたいなものなのでこのままの形で覚えてしまいましょう。

 

次に2番の最後で珍しい言い方が出てきます。
この歌の中でも「I'm dreaming of a white Christmas」と言ってるし、「We wish you a merry Christmas」という歌もあるし、Christmasが数えられるというのは皆さんお気付きでしょう。
で、数えられるのであれば複数形も当然あります。あまり聞き慣れないですが「Christmases」も当然ありなんですね。

でも、「Merry Christmas!」と挨拶になる時は「A」が付きません。法則としては、文章の中で目的語として使われる時だけ可算名詞になるんです。

A Merry Christmas!なんて言ったことないし、そんなの当たり前」と思ってるそこの貴方、じゃーもちろん「A Happy New Year!」も間違いであることはおわかりですよね?

そうなんです、なぜか日本ではHappy New Yearの方は「A」が付いた形で定着してしまっています。
年賀状を既に「A」付きのフォーマットで注文してしまった方、ご愁傷様です。。。

Christmasの複数形にはまだ続きがあります。
この曲が最初にヒットした1942年は第二次世界大戦真っ只中の時期で、この前年に太平洋戦争も始まっています。ハワイなどChristmasでも雪が降らない太平洋の前線などに派兵された兵士などが離れた家族を想う歌として共感し、ラジオへのリクエストが大量に寄せられたそうです。

『今年のChristmasだけではなく、あなたのこれからの人生全てのChristmasで雪が降りますように』という歌詞の意味から、何年後に帰れるかわからない辛さ、もしかすると戦死して愛する人と二度とChristmasを過ごせなくなるかもしれない、という恐怖も当時の兵士達がこの歌を支持した理由だったのかもしれません。

 

さて、曲からのピックアップはこれくらいにして、もう少しChristmasのウンチクを語っていきましょう。

【X'mas】

日本ではChristmasをよく「X'mas」とアポストロフィを付けて省略しますが、これは英語としては間違いです。
正しくは「Xmas」または「X-mas」になります。
日本ではもうこの間違いが「A Happy New Year!」くらい定着しちゃってるので、和製英語として考えれば目くじら立てるほどのことではありませんが。

 

【Christmas Eve】

日本ではクリスマスよりクリスマス・イブの方が盛り上がりますが、この「Eve」って何のことか考えたことありますか?
これ、元は英語の「Evening」なので、クリスマス・イブは前日の夜のことを指していたんです。ただ、現在は夜だけでなく前の日全てを意味するように変わっています。

実は日本語の「元旦」も同じような背景があります。「」の漢字は水平線・地平線から太陽が昇っていく様を表しているので、元々は「1月1日の朝」という意味です。が、これも1日の最初である朝から「最初」という意味が強くなり、1年で最初の日である「1月1日全て」を意味するようになったと考えられます。

 

【給料日】

えー、今の会社は毎月21日が給料日なんですが、Christmasという単語には口語で『給料日(=pay day)』という意味があります。なので、

Tomorrow is my Christmas day!

という表現は日本だと1年で12回ほど使えます。
欧米のpay dayは2週間に1回だったりするので、もっとChristmasだらけですね。(笑